軸組み工法

宮坂邸の軒「出隅」

冨田邸の梁組み「亥叉首(いのこさす)」

「尾引(大曳)造り」

伝統技術を生かした在来構法の良さ

 藤森 千正(先代)

 

 近年、従来の木材を主体とした在来構法の木造建築が良いと、見直されて来ています。日本人が、木の特性を生かし、気候風土に合ったように造られた木造の家に住むと、百年でも、二百年でも住み続けることが出来ます。例えば、土台に栗材、ヒバ材を使うと腐りにくく虫がくわない、雨のあたる所には唐松、さわら材、耐久力がある松梁丸太、柱に桧、松、杉などを使います。まだまだ沢山の箇所と樹種の使い方がありますが、おのおのの木の特性や癖を生かし、乾燥材を使って住み良い家が造られ、今日に至っています。もちろん、新構法の良い部分も取り入れることによって、より良い家になります。

 しかし、昨今、木材が壁の中に隠れてしまう大壁構法の家が多くなりました。軸組や内外装に木材をふんだんに使った家は、コストが高そうで、手が届かないと思われているようですが、決してそうではありません。適材適所とする事で適正なコストで施工する事が出来ます。そして、木の家は住む人にとって良い面が多くあります。森林浴のような効果があり、有害な化学物質が少なく、湿度の調整もします。とても快適で健康的です。木材を沢山使った家を薦めます。

 

 ここで、伝統的な工法の一例を紹介します。

 「尾引(大曳、おびき)造り」です。

 現在の造り方のほとんどは、土台が大引を兼ねて、土台の上に根太を転がして床板、畳又はフローリングの上での生活です。根太の下に大引きがありますが、床を支えるだけで、水平力(地震力等)に効果があるような組み方になっていません。

 従来の「尾引(大曳)造り」は、土台の上端より1尺(約30cm)ほど上に、土台と同じ大きさの「尾引」を入れ、根太を掘り込み、床板、畳又はフローリングの上での生活になります。

 その事で、床高を高くでき、床下に十分な空気容量がとれるので、家の中が自然乾燥し快適です。また、伝統工法の「足固め」のように柱と柱をつないでいるので、耐震性にも利があります。

 「尾引(大曳)造り」は、長い年月をかけて編み出された工法です。

 

2001年3月1日記